歯周病

インプラント治療を勧められているのですが、手術が不安なのです

A.近年、一般開業医においても、歯が無くなった時の治療法としてインプラント(人工歯根)治療のニーズが増え、多くの歯科医院で実施されるようになりました。しかし、患者さんの75%以上がインプラント手術前には緊張感を持っているという報告もあり、手術中、手術後の痛みや不快症状の発現に不安を持っているのが実状でしょう。
 昨年、私たちは、東洋医学的療法をはじめとする各種代替療法を応用することにより、快適なインプラント手術が受けられ、術後の不快症状予防につながるかどうかを調査し、学会で発表しました。
 調査した患者さんは、当法人にてインプラント手術を受けた252名(男107名、女145名、年齢29~75才)で、インプラント手術前、手術中、手術後に各種代替療法を併用し、術中~術後の「痛み」や「腫れ」などの不快症状発現の有無を調べました。

 実施した代替療法をご紹介します。まずは診査時にバイディジタルO-リングテストや波動測定で、全身の状態やインプラント、麻酔、薬などが体に合うかどうかを調べます。また手術前の全身管理として必要があれば、サプリメントや漢方薬を処方します。
 手術前には、マッサージとリフレクソロジー(足の反射療法)にて、血液循環をよくすると同時に、リラクセーションを促します。精神的な安定や自己治癒力促進のために、ホメオパシーやバッチ・フラワーも飲用していただきます。
 手術中は、鎮痛効果と治癒の促進を期待して、手および顔のツボにゴム電極を貼付して低周波ツボ通電を行い、手術後は、氣圧療法で氣の流れをよくするとともに、インプラントと顎の骨との生着を祈ります。

 インプラント手術において、このような代替療法をプラスした歯科統合医療を実践することにより、「痛み」においては著効79.4%有効14.7%合わせて94.1%、「腫れ」においては著効76.2%、有効19.0%合わせて95.2%と、高い効果を得られることができました。また、患者さんからも、「思ったより、楽に手術を受けることができました。」との喜びの言葉をたくさん頂戴しました。
 統合医療というアプローチをすることによって、インプラントという口の中に異物を入れるという治療を、少しでもボディ(全身)やマインド (心)から配慮してあげることができるのではないかと思います。また、統合医療によって患者さんと一緒に治癒の“場”をつくることにより、よりコミュニケーションを深めることができたと思います。

医療法人社団 明徳会 理事長 福岡 博史

舌の正しい位置について

 リラックスしている時に「正しい舌の置き場所」があることを御存知ですか?みなさんには意外と知られていないようですが、舌の位置が良くないと 喰いしばりや不正歯列、口呼吸等を起こし、知覚過敏症になったり、歯の被せ物が取れたりなど、お口の中に様々な悪影響を及ぼします。 そこで今回は、この「舌」について少しお話しましょう。

 舌の置き所はとても重要です。 上下の前歯の間から舌がはみ出したり、下の前歯の裏側に触れていたりする 舌の悪い癖の事を指して『舌癖』と言います。この舌癖の代表的な原因は口呼吸で、アレルギー性鼻炎、蓄膿症、扁桃腺肥大、アデノイド肥大などが口呼吸の原因として上げられます。これらの病気は子供から大人に成長する過程で治ることが多いのですが、その後も口呼吸が続いて舌癖が残ってしまう方が多いようです。反対に舌の正しい位置を知らないことで、無意識に舌を下の前歯の 裏側に置いているために口呼吸を誘導してしまっている事もあるようです。 卵と鶏のようなものですね。

 さて「舌の正しい位置」です。まず肩の力を抜いて下さい。次に首、頬をリラックスさせて口を閉じてみて下さい。 舌は何処にありますか?口の天井(口蓋)に着いていて舌先が 上の前歯の付け根に着いていれば正解です。 その時、上下の歯と歯の間には2~3mmのスペースが在るのが通常です。私たちはこの位置を下顎の生理的安静位と呼んでいます。「座禅」の正しい座り方の作法の中にも口の形に関する項があり、「舌を口の天井につけて、口の中の空間をなくしてください」とあります。これを、しっぺい口と言うそうで、まさにそれが舌の正しい位置です。

 舌癖のある方が急に舌を正しい位置にしてもすぐにはうまく行きません。長期間の習慣で舌の根にある筋力が落ちているからです。意識的に気をつけることで徐々には慣れてきますが、 はやく改善したい場合にはタング(舌)エクササイズがおすすめです。積極的に舌を動かして筋力を高める方法です。色々な器具なども一般に販売されていますが、 気になる方は担当医に相談されては如何ですか?

統合医療研究所歯科室 院長 籐 兼次

歯ぎしりについて

 患者様からのご質問で、「今のところ特に症状はないのですが、歯ぎしりを指摘されます。どのようなことに注意すればよいのでしょうか。」と聞かれることがたびたびあります。この歯ぎしりについて、お話します。

 歯ぎしりは自分では意識のない、寝ているときに行われるため、食事中には使わないような強い力(時には自分の体重以上の力)で、歯に過度の負担をかけます。鏡を見て、歯が平らにすり減っている人は、確実に歯ぎしりをしているといえます。週に1回以上歯ぎしりをする人は、約10パーセントおり、そのうち半数の人が歯やあごに何らかの症状が出ています。

 歯ぎしりには、①上下の歯をすり合わせる(グラインディング)②上下の歯をぶつけ合う(タッピング)③上下の歯を強くかみしめる(クレンチング)の3つのタイプに分類され、それぞれが組み合わさって起きることもあります。歯ぎしりが強い人には、下の歯の内側の骨が瘤のように盛り上がっていることがありますが、これは歯に大きな負担がかかっているためです。患者さんの中には、変な病気ではないのかと気にされる方がいらっしゃいますが、異常なものではなく、心配の必要はありません。

 根本的な原因は不明ですが、咬み合わせが悪いなど何らかの異常があり、それに精神的ストレスが加わって緊張状態が増加しているときに起きるものと考えられています。たとえば、新しい詰め物や、かぶせもの(クラウンやブリッジ)を着けたときに起こることがあります。着けるときの調整が不十分で高い状態にあると、無意識のうちに高さを整えようとして歯ぎしりをすることがあります。

 歯ぎしりが原因で起こってくる問題としては、特定の歯(歯ぎしりのときに特に力が加わる歯)の歯周病の進行、歯の移動、動揺、知覚過敏症の出現や、被せてある金属が取れやすくなったりします。

 歯ぎしりの治療として、かみ合わせの調整がまず必要です。たとえ、歯ぎしりが行われても特定の歯に力がかかり過ぎないように、歯をわずかに削ったり、また反対にすり減ってしまった歯を高くして、全体のバランスを改善します。
 マウスピースのようなプレートを作るのも、一般的な治療法です。歯型を採り、上下どちらかの歯列に合わせた薄い板状のものを装着します。マウスピース装着により、歯ぎしりが無くなるわけではありません。歯ぎしり自体を完全に押さえ込むことも可能ですが、今度は歯ぎしりが出来ないことが、その人にとって、非常に大きなストレスになってしまいます。つまり、マウスピースは歯ぎしりによるダメージを最小限にしようとするためのものなのです。ちなみに、歯ぎしり用のマウスピースは健康保険に適用され、五千円程度です。ただし、ストレスから歯ぎしりが起こっている場合には、心療内科を受診し、心のケアを中心に治療したほうがよいこともあります。

 最近の研究で、夜間の歯ぎしりは、いびきや睡眠時無呼吸症候群と密接な関係があるという見解が示されています。歯ぎしりの直後に、睡眠時無呼吸症が起こることがよくあるのです。われわれ歯科医は歯ぎしりが疑われる症状が出ている患者さんに、いびき、睡眠時無呼吸症候群について注意を促す必要があるのではないでしょうか。
 良質な睡眠を得ることは、社会生活を快適に過ごす上でとても大切です。たとえ自覚症状がなくても、歯ぎしりを指摘されたことがある方は、早めの受診をお勧めします。

 小児の歯ぎしりは、あごの成長発育によい刺激になるといわれ心配なく、ほとんどの場合、乳歯と永久歯の入れ替え時期に限られた一過性のものです。しかし、前歯のすり減り方がひどい場合は、かみ合わせに影響がでたり、あごの形が変ってしまうことさえあり、永久歯の歯並びにも影響してくるので、早期に小児歯科医に相談されるとよいでしょう。

福岡歯科 祐天寺院 院長 平林秀敏